G×L-innovation研究所

組織・人事の「グローバル化」「ローカル化」研究所

SHRM2018:これから求められるHRの役割②

6月17日-20日SHRMという世界最大の人材マネジメント協会のカンファレンス(US Chicago)の記事第二弾です。

 

SHRM2018の主要テーマは下記になります(再掲載)
・Talent Management
・Leadership Development
・Global Human Resource Development
・Organizational Culture
・Innovative Design
・Diversity & Inclusion Development
・Health Care & Well-Being
・Neuroscience
・Strategic HR
・HR Technology
・People Analytics

 

本記事では、②について考察していきます。

HR(人事)のトレンドは、「タレントマネジメント」→「ピープルマネジメント」→「チームパフォーマンス」と移行してきており、人の集合体であるチーム(関係性)をどう活性化させるかという議論が盛んにされています。


エンゲージメント向上とミレニアル世代に対する組織・人事の新ルール

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 HRの分野において「社員のエンゲージメント向上」は、重要キーワードになっています。

※エンゲージメント:組織のビジョン・目標達成に向けての社員の自発的な貢献意欲

 

<エンゲージメントを高める構成要素とは>
1)Belonging(所属意識):Feeling part of a team, group or organization.
2)Purpose(目的意識):Understanding why one’s work matters.
3)Achievement(達成感):A sense of accomplishment in the world.
4)Happiness(幸福感):The pleasant feeling arising in and around work.
5)Vigor(活力):The presence of energy, enthusiasm, and excitement at work.

 

上記の通りエンゲージメントを高める要素は「内発的要因」が鍵になります。
もちろん金銭報酬である「外発的要因」も重要ですが、長期的に人をマネジメントしていくためには上記の要素は不可欠です。

また、ミレニアル世代(1981年-2000年代生まれの世代)へのマネジメントこそ、内発的動機づけが重要になっていると感じます。
ちなみに、東南アジア市場でもミレニアル世代が労働世代のメイン世代となっています。

これまでの東南アジアを軸とした組織・人事コンサルティング経験から、ミレニアル世代に対する組織・人材マネジメントは下記がキーであると考えています。

 

<ミレニアル世代に対する組織・人事の新ルール>
1)キャリア開発とメリハリを効かせた人事制度
年功序列な人事制度からの脱却。キャリアステップの明確化

2)柔軟な勤務形態とパフォーマンスマネジメント
特にホワイトカラーに対しては、労働時間ではなくパフォーマンス(成果)で握る

3)けじめの評価とリアルタイムフィードバック
1年に1回、半年に1回のフィードバック頻度では、モチベーションが持続しない。
半期に1回の「けじめの評価」と、「日常的なフィードバック」を。

4)キャリアと職務の「ジョブフィット」
スペシャリスト志向が強い東南アジアの人材は、職務のジョブフィットが鍵。
また、成長実感を持てる環境かどうか。

各国の労働市場、メインの労働世代を踏まえたマネジメント方針に切り替えていく必要があります。 


ニューロサイエンス(神経科学)の知見を人事に活かす

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近年、人事や人材開発、組織変革といった領域において、「ニューロサイエンス(神経科学)」の知見を生かそうとする取り組みが広がってきています。
SHRM2018においても、ニューロサイエンスのセッションはどれも満席でした。

HR領域においてニューロサイエンスの知見が注目をされている背景に、組織のダイバーシティ化によるバイアス(偏見)の増加、また国籍間の認識ギャップだけではなく、ミレニアル世代の台頭を始めとする世代間ギャップなど、自己認識を問う機会が多くなっていることが考えられます。

ニューロサイエンスの第一人者でもあるNeuroLeadershipのDavid Rock氏の提言を始めいくつかご紹介します。

 

<SEEDSモデル>バイアス(偏見)が起こる5つのパターンとそれを緩和する施策
■Similarity(同一性)
自分と良く似た人を高く評価する傾向(他者に興味を持つ時や、他者を評価する時に起きる)
→対策:他者との共通部分を探すことで、バイアスが起こりやすい点を自覚する

■Expedience(自分都合)
自分が正しく感じること・考えることは「正解」であるという思い込み
→対策:事実に基づいた証拠を集め、判断に客観性を持たせる

■Experience(自分の経験・認知)
自分で経験したこと(知っていること)は「正解」であるという思い込み
→対策:自分と違うタイプの人材をセカンドオピニオンに置く

■Distance(距離・間隔)
時間的・距離的に近い場所で起きた事象を高く評価する傾向
→対策:近視眼的になるのではなく、物事を俯瞰して考える

■Safety(安全)
驚異に感じることを避け、安全な方向に進もうとする傾向
→対策:直近の驚異ではなく、長期的な視点を踏まえて考える


<SCARFモデル>「報酬」と「脅威」を感じる引き金となる5つの要素
■Status(地位)
他者と比較して、自分の地位は高いか低いか

■Certainty(確実性)
未来が予測できているか。不確実性は脳にとっては脅威である

■Autonomy(自律性)
出来事に対して自らコントロールができると感じられているか

■Relatedness(関連性)
周囲と繋がっている感覚があるか、または敵と感じているか

■Fairness(公平性)
平等に扱われていると感じているか

 

脳の仕組みは、国籍や人種を超えた共通事象であり今後、不可欠な学問になってくるでしょう。引き続き最新の知見を集約していきたいと思います。


世界中でHR(人事)の重要性は年々高まっています。

一方で、東南アジアを始めとする海外現地法人では、「その国の国民性を分かり始めたタイミング(3-5年)で駐在員が帰任する」というサイクルを繰り返しており、「属人的な人事」からまだまだ脱却できていないと感じています。

HRの分野においてもテクノロジーの進化は急激に進んでいます。
テクノロジーの進化をうまく活かし、採用・評価・人材配置などのあらゆる人事データの収集と分析を実行し、データに基づいた意思決定を促していく必要があるでしょう。

また、より人間的な職場環境を設計し、国籍や人種を超えてイノベーションが生まれる組織(場)を設計できるかどうか。
HRに求められる2つの役割をこれからも追求していきます。