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グローバル化における組織・人事変革コンサルティングと資産設計のポートフォリオデザイン

EI=Emotional Intelligence(感情的知性)を科学する

Harvard Business Reviewの論文で、EI=Emotional Intelligence(感情的知性)をテーマに日本語版で創刊された「幸福学」「共感力」を読みました。

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昨年、6月17日-20日SHRMという世界最大の人材マネジメント協会のカンファレンス(US Chicago)に参加した際に「これから求められるHRの役割」としてまとめましたが、「社員のエンゲージメント向上」は、人材マネジメントにおける重要KPIになると確信しています。

エンゲージメント:組織のビジョン・目標達成に向けての社員の自発的な貢献意欲

 

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<エンゲージメントを高める構成要素>
1)Belonging(所属意識):Feeling part of a team, group or organization.
2)Purpose(目的意識):Understanding why one’s work matters.
3)Achievement(達成感):A sense of accomplishment in the world.
4)Happiness(幸福感):The pleasant feeling arising in and around work.
5)Vigor(活力):The presence of energy, enthusiasm, and excitement at work. 

上記の通りエンゲージメントを高める要素は「内発的要因」が鍵になります。よって、「感情」を科学することに今年は焦点を当てています。

さて、掲載されている論文の原文(英文)をいくつか見たのですが、10年以上前の論文であったり、まだまだ日本(日系企業)に届くHRの世界は時差がありますね。情報の触媒になれればと思いまして、インスパイアされた文章と思考整理を共有します。

 

幸福学

・欧米の幸福学の現場では、「Happiness & Well-being」という表現が多様される。
・人間の心は一日のほぼ半分はさまよっており、これが気分を落ち込ませる要因になっている。
・就業中に心がさまようと、幸福度が低くなるだけではなく、生産性も低下する。
 
<社員を成功させる方法>
1)判断の裁量を与える
2)情報を共有する
3)ぞんざいな扱いを極力なくす
4)成果についてフィードバックを行う
 
<やりがいを失くす4つの道>
1)自分の仕事やアイデアがリーダーや仕事仲間から相手にされないこと。
2)自分の仕事から当事者意識が失われること。
3)自分たちが従事している仕事は日の目を見ないのではないかと社員に疑念を抱かせること。
4)頼まれた数多くの具体的な作業に対して、自分にはもっと能力があるのにと感じてしまうとき。
 
<職場で十分にエンゲージメントと幸福感を得るために欲しいもの>
1)将来に向けた有意義な展望
・人が学習し自分を変えるのは、個人的な展望と組織の展望が結びついている時である。
2)意義のある目的
3)素晴らしい人間関係
 
PERMA Model:Scientific Theory of Happiness>
・Positive Emotion:安らぎ、感謝、満足、喜び、インスピレーション、希望、好奇心、愛などの感情
・Engagement:タスクやプロジェクトに没頭すると、我を忘れ、いつの間にか時間が経っているという経験をすることがある
・Relationship:他者と有意義で肯定的な関係を持つ人は、そうでない人よりも幸福である。
・Meaning:自分のためではなく価値ある理念のために行動するときに、自らの存在に意味を感じることができる。
・Achievement:満足のいく人生のためには、よりよい自分になるために何らかの努力を続ける必要がある。
 
Inner Work Life:個人的職務経験・仕事そのものから得られる満足度>
・最も重要なことは「仕事の進捗を可視化し、支援する」ことである。
・ほんの僅かな前進でも、小さな成功でもかまわないので、とにかく毎日部下の進捗を支援することが必要
・毎日確実に前進している、前進することに成功しているという達成感こそが、この概念における「ご褒美」
・その進捗を感じる頻度が増えれば増えるほど、創造的な仕事の生産性を長期的に高めやすくなる。
1)やりがいのある仕事における進捗
2)仕事を支援してもらう触媒ファクター
3)やる気を増発させる人間関係、栄養ファクター
 

共感力

・医師は、側頭頭頂接合部と前頭前皮質にある感情を無視して集中力を高める働きを持つ神経回路から、反応を抑える麻酔のようなものが分泌される。治療中に患者の痛みを共感することを制御する。
・人は大きな権力を伴う地位に就くと、本来持っていた共感力が希薄になるという傾向がある。
・過去に苦境を乗り越えた経験を持つ人は、似たような苦境にあり克服できないでいる人に対して、特に厳しい見方をする傾向が強い。
 
共感の3タイプ>Daniel Goleman
1)認知的共感:他者の視点を理解する力
・認知的共感を抱くには、相手の胸の内をそのまま受け止めるのではなく、相手がどんな感情を持っているかを考える必要がある。
2)情動的共感:他者の感情を汲み取る力
・大脳新皮質の内側にある進化的に古い部分、すなわち扁桃体、視床下部、海馬、眼窩前頭皮質の部位の働きにより、深く考えなくても速やかに何かを感じることができる。
3)共感的関心:相手が自分に何を求めているのかを察知する力
・他者の苦悩を我が事のように受け止める時には直感を頼るが、相手のニーズに応えるかどうかを判断する時は、その人の幸福が自分にとってどれだけ重要かを熟考している。この直感と熟考のバランスをうまく取ることに大きな意味がある。
 
<優れた聞き手の振る舞い>
1)よい傾聴は、相手が話している間に黙っていればよいというものでは決してなく、発見や洞察を引き出すような質問を定期的に投げかけること。
2)よい傾聴は、相手の自己肯定感を育むようなやり取りを伴う。相手に「自分はこの聞き手に支えられていて、信頼されている」という実感を抱かせる。
3)よい傾聴は、協調的な会話のようなもの。フィードバックが双方向にスムーズに行き交い、どちらも相手のコメントに身構えることはない。
4)よい傾聴は、提案を投げかける傾向がある。
 
<傾聴レベル>
1)難しい問題、複雑な問題、感情的な問題について議論できるよう安全な環境をつくり出す。
2)電話やパソコンなど気を散らかせるものを取り除く。相手に注意を集中させて、適切なアイコンタクトを取る。
3)相手が言わんとしていることの本質を理解しょうと努める。
4)非言語的手がかりを観察する。
5)目の前の話題に関する相手の感情や気持ちを徐々に理解していき、見極め、受け入れる。
6)相手が置いている前提が明らかになるような質問を投げかけ、その人が新たな視点で問題を捉えられるようにサポートする。
 
<EIの2つの能力>Annie McKee
1)共感:参加者を注意深く「読む」
・誰が誰に影響を及ぼせるのかという人的な力学を「読む」
2)感情の自己管理:リーダーの感情を不要に伝染させない