G×L-innovation研究所

組織・人事の「グローバル化」「ローカル化」研究所

日本人の心と、東洋の美意識とは

今、日本の「働き方改革」を始め、日本だけではなく「働き方」をReDesign(再構築)する動きが世界中で起きてきていると感じています。

私は「働き方改革」は「働く空間(場)」の設計であると考えており、生産性を高めるためには、いかに「創造的な空間(場)」を創るかが鍵だと思っています。

また、創造的と捉える(美意識を感じる)空間(場)は東洋と西洋で多少異なると考えており、西洋から学ぶ(真似る)だけではなく、東洋に眠っている叡智を踏まえた働き方・働く空間のReDesignが必要とされていると思います。

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 今、東洋思想を再考しようと、河合隼雄さん(日本におけるユング心理学の第一人者)の本を再読しています。

河合隼雄さんの本が以前から好きで、

神話と日本人の心

昔話と日本人の心

ユング心理学と仏教

は特に名著だと思います。

「昔話と日本人の心」という書籍で「浦島太郎」と「鶴の恩返し」に見るメタファーが印象的だったのでまとめておきます。

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「浦島太郎」に見る日本人の心

日本人である限り、「浦島太郎」の話を知らない人はまずいないと思います。

主人公の浦島太郎が助けた亀に連れられて、竜宮城に行く。そこで美しい乙姫さまの歓待を受けるが、「故郷」が恋しくなって帰る。竜宮城の三年はこの世の三百年になっていて、心細くなった浦島太郎は開けてはならないと乙姫に言われていた玉手箱を開けて老人になってしまうという話ですね。

この物語の「竜宮城」を無意識界、「故郷」を意識界と河合氏は述べています。その観点でこの物語を読み解いています。

浦島太郎は、「竜宮城」という無意識界の中で、時空を越えました(無時間性)。そして、故郷が恋しくなって帰還します。その時、乙姫から「開けてはならない」玉手箱を渡されたことが興味深いです。

日本昔話には「開けてはならない・見てはならない」という禁止を試されているシーンが良くあります。(鶴の恩返しも正にそう)しかしながら、浦島太郎は、その禁止の結界を開けてしまい、意識界の中で現実の年齢として、老人になってしまいます。

 西洋の物語は、「何かを達成する」という英雄伝説がほとんどです。
自我が明確でありその分、意識界・無意識界の区別が明白になっている傾向があり、物事を対象化して把握する力を持つ考えです。

それに対して、日本の物語は、常に境界を曖昧にします。浦島太郎の物語のような無意識界・意識界を行ったり来たりする物語は多数あるように感じます。

“常に境界を曖昧にすることによって、全体を未分化なままで把握しようとする力”

“境界を越えて、曖昧な中でも融合していく力”

日本人の心の在り方の一つに思えます。

 

「鶴女房」に見る日本人の心

 続いて、「鶴女房」(鶴の恩返し)を読み解いてみます。コチラも日本人では知らない人はいないであろう昔話。

この物語に焦点を当てているのが異類婚姻譚(イルイコンインタン)

異類婚姻譚‥人間と違った種類の存在(動物など)と人間とが結婚する昔話。

西洋の物語は、もともと人間の女性だったのが、動物に変身する物語が多いです。
(変身は魔術によってのみ可能であると考えられており、人間と動物との結婚と思われるものも、実は人間でありながら魔法によって動物の姿を強いられていた者が、人間の愛情によって魔法を解かれ、もとの人間に戻ってから人間と結婚するパターン。ほとんどがハッピー・エンド)

しかし、日本の物語(昔話)は、もともと動物であったものが人間の女性となり、人間と結婚する物語が非常に多く、コレは西洋の物語では極めて稀な話だと河合氏は述べています。

「鶴女房」の話では、人間に変身し恩返しをしにきた鶴の正体を旦那が見てしまい、鶴は自然界に還ってしまいます。この物語を「人と自然(動物)との一体感を一度断ち切りながらも(鶴の正体を知ってしまう)、前とは異質となった自然に還ることによって全体性を回復する」と河合氏は読み解いています。

“自然や動物を一体視し、何かの出来事で断ち切られたとしても、前とは異質のものとして全体のバランスを回復する力”

コレも日本人の在り方の一つではないでしょうか。

 

そして、中でも本著の中で極めつけだったのが、日本の昔話に出てくる登場人物のコンステレーション(配置)です。

コンステレーション(布置・配置)‥ユング心理学の言葉。一見、無関係に並んで配列しているようにしか見えないものがある時、全体的な意味を含んだものに見えてくること。

日本の昔話は、母と息子の関係性が強い物語が多く、そして「翁(祖父)」が登場人物として多く出てきます。

翁(祖父)-母-息子というコンステレーション。

老人と少年、父と娘、母と息子。この関係性で成り立っている物語が多いということです。

この配置を心理学の構造で読み解くと、母は正しく母性であり、女性の意識。息子は、未発達の男性性。この二つの構造は、最も安定的ですが、息子の男性性が成長し極めて強くなるとき、その安定はしがらみとして感じられることがあるようです。そこに、母性の強さを補償する男性として、「翁(祖父)」を配置しています。

「翁(祖父)」が背後からカバーをしているという水底のコンステレーション。

“全体のバランスを保つために、背後や水底でカバーしている存在”

コレも日本人の在り方であり、美意識に繋がっていると思います。

今回は東洋の中でもより日本人の心の在り方についてまとめましたが、東洋の美意識・創造性を見つめ直し、東洋に眠っている叡智を踏まえた働き方・働く空間のReDesignを追求していきます。